原子力発電所とは、ウランやプルトニウムといった放射性元素が核崩壊するときに生み出されるエネルギーを利用し、最終的には私たちが使う電気エネルギーを生み出すための施設です。
ウランのような元素は、一定のレベルで原子核が崩壊して別の元素に変わる性質を持っているのですが、このとき同時に高速で移動する中性子などの粒子が放出されます。
動いている物体はどんなものでも運動エネルギーを持っているわけですが、これは中性子のような非常に小さい粒子であっても本質的に同じです。
もちろん、質量が小さい分だけ持っているエネルギーは小さいのですが、その分、私たちが身近なところで感じられるものとは比較にならないくらいのスピードを持っており、また放出される粒子の数も非常に多いですから、一つ一つは小さくても全体としては大きなエネルギーを生み出すことができるのです。
目次
原子力による電気エネルギーの生み出し方
具体的にどのようにして電気エネルギーを生み出すのかと言えば、原理的にはさほど難しいものではありません。
中性子などの運動エネルギーを水分子に吸収させることで水温を上げることができます。
温度の高さというのは即ちその原子や分子の運動エネルギーの大きさのことですから、運動エネルギーを受け渡すことで温度を高くできるわけです。
このようにして水温を上げ、水蒸気にすることで圧力を生み出すことができますから、その圧力でタービンを回すことで発電できるというのが原子力発電所の原理となります。
発電所としてはもちろん原子力を用いたもの以外にも火力や水力、風力などがあり、最近では太陽光を用いるものもあります。
このような他の発電所と比較して原子力発電所にはどのようなメリットがあり、逆にどのようなデメリットがあるのでしょうか。
資源的に先の見えている石油や石炭を使わずに済む
まずメリットですが、化石燃料を用いる火力発電所と比較すると、資源的に先の見えている石油や石炭を使わずに済むという点があります。
化石燃料を用いませんから、発電時に二酸化炭素などの地球温暖化ガスも発生させません。
化石燃料の枯渇や地球温暖化が問題になっている現在、火力発電にあまりに依存することは議論の的になるわけです。
化石燃料を使わず地球温暖化ガスを発生させないという点に関しては水力や風力、太陽光発電も同じではありますが、原子力の場合、それらの自然エネルギーを利用した発電と比べると生み出せる電気の量が多く、かつ安定しているという特徴があります。
電気は基本的に貯蔵することが困難であり、必要な時に必要な分だけ発電して供給するのが基本です。
水力発電は渇水時には十分な発電ができませんし、風力発電も風がいつも必要なだけ吹いているとは限りません。
太陽光にしても曇りや雨の時には発電量が落ちますし、夜は発電できないわけですが、だからといって需要に供給が追い付かないことは社会的に許容されないでしょう。
天候などに左右されることなく発電できる
天候などに左右されることなく発電できる原子力発電に期待されるところは大きいわけです。
もちろん、原子力発電に用いるウランのような元素も地球上に無限に存在するわけではありません。
ですが、石油や石炭と比較すると相当に長い期間にわたって需要を賄えると考えられているうえに、発電によってまた新たな放射性元素が生み出され、それによって次の発電を行うといったようにサイクルを構成することも考えられており、資源の枯渇という観点ではまずまず明るい兆しがあると言えます。
一方で原子力発電所にはデメリットというかマイナス面もあります。
その最大のものはもちろん事故の可能性です。
東日本大震災時の福島第一発電所は深刻な事故を起こした
強い放射能は人間を含むあらゆる生命にとって致命的に有害であり、放射能が外部に漏れるようなことのないよう万全を期して制御しなければなりません。
このためには何重もの手段が取られていますが、それでも事実として過去には事故が発生しており、旧ソ連のチェルノブイリ発電所や、東日本大震災時の福島第一発電所は深刻な事故を起こした例です。
一旦事故が起こって放射性元素が環境中に放出されてしまうと、風や川、海流などの流れに乗って遠くまで運ばれたり、いろいろな生物に取り込まれて運ばれることもあれば、食物連鎖により濃縮されることもあります。
放射能は目に見えませんし、広範囲に散らばったものを回収したり除去したりするのは莫大な労力がかかります。
結局のところ回収など諦め、原子炉内で起きているように放射性の原子核が崩壊して他の元素に変わっていき、最終的には放射能を出さない元素に変わるまで待つしかないこともあります。
まとめ
また、事故など起こさなくても、用いた核燃料はいずれは発電のために十分な放射能を生み出せないくらいになり、いわば不要物となってしまいます。
ところがこれは発電には十分なレベルではなくても、人間その他の生物にとっては十分すぎるほどに有害な放射能を継続して出し続けており、一般のゴミと同じように処分することなど到底できません。
これをどのように管理していくのかも悩ましい問題となっています。
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最終更新日 2025年7月8日 by thejerry