私の友人である鈴木貞一郎くんは、親の代からの美容院を引き継いで経営しています。
彼は30代で、普通の短大を卒業したために美容学校で勉強をし直し、経営学も独学からセミナーなどに参加して学んでいきました。
本人は一人っ子ですが、若い頃は美容院を継ぐ気はなく両親も継がなければそれでもいいと考えていたようです。
それがなぜ、今継ぐ気になったのか。
6年前にお父さんが病気で入院することになり、1か月ほどお店を開けられなくなった時がありました。
突然の事だったので常連さんに詳しい話もできないまま、お店の前に張り紙と留守番電話での対応だったようです。
お店にも何人か心配したお客さんが様子を見に来たり、事情を聞いたお客さんがお見舞いに来てくれたと聞きました。
そんなお父さんを見て、これほどまでお客さんに慕われているすごい仕事なんだと感じたそうです。
それと同時に、もしお父さんがまた入院したり年老いて仕事が出来なくなったらこのお客さんたちは困るかもしれないと考えたと言います。
これまでは、接客業を避けて生きてきた彼は決断します。
せめて、技術が追いつかなくても経営の勉強をしっかりして従業員を雇ってでもこの店を守っていきたいと。
しかし、美容の事をまったく知らないというのも経営者失格と考えた彼は美容学校に入学したのです。
この決断を聞いた時、私は非常に驚きました。
なぜながら、彼がこれほどまでに情熱的だと思わなかったからです。
学生時代から常に冷静沈着で、どこか人と一線を引いて付き合うタイプだったし、自分に向いていない事は無理しないというのが彼の鉄則でした。
なので、あえて専門学校に入って勉強するという選択にはじめは信じられませんでした。
そんな周囲の心配をよそに彼は2年間を終え、見事に卒業して資格試験までパスしてみせました。
お父さんは口には出しませんでしたが、とても心配していたと思います。
いつも口喧嘩ばかりのお母さんも見守っていました。
今では彼は立派な経営者です。
最終更新日 2025年7月8日 by thejerry